さみしさの心理学-孤独学序説-
さみしさとは何か。
それは人間が個人でもあるけれど、同時に集団の一員でもあるという二重性から生まれてくる根源的な感情です。私たちはだれしも一人であると同時に、みんなの一部でもある。ここにある人間の分裂こそが、さみしさの構造です。そう、つながりがあるから、さみしさもある。
さみしさは人間にさまざまな苦痛を与え、さまざまな症状や問題を引き起こす感情であると共に、それをひきうけることができるならば心の成熟をもたらすことにもなるふしぎな感情です。さみしさは「孤立」として現れるときには、私たちを傷つけ、損ないますが、同時に「孤独」という形をとるときには、思索を深め、感情を豊かにするものでもあるということです。
さみしさは深い。哲学者のハンナ・アーレントがさみしさをisolation、solitude、lonelinessに分解したように、そこには複数の現われ方があり、複数の働きがあります。本講義では、このさみしさの全容を解き明かしたいと思います。さみしさはどこからきて、どこへ行こうとするのか。さみしさは何をもたらし、何を奪うのか。さみしさにいかに対処することができるのか。
さみしさの心理学をはじめてみようと思います。さみしさの歴史を振り返り、さみしさの発達を見て、さみしさの病理を観察し、さみしさの治療を試みる。最終的にさみしさの善きところまで見ることができたなら、私たちはさみしさと共に居ることができるようになるかもしれません。
いわば、孤独学序説。現代社会のあらゆるところに存在するさみしさについて、心理学的に、人類学的に、社会学的に、文学的に(参考文献をご覧ください)、そしてなにより臨床的に考えてみようと思います。
ー 受講対象 ー
- さみしい人
- さみしい人をさみしくならないようにケアしている人
- さみしくさせてしまう人
- さみしくなったことがない人
*専門家もそうでない人も、みんなが対象です。さみしさは日常にも、支援にも、人生にもあふれています。ぜひ一緒に勉強しましょう。
ー スケジュール ー
2026年5月~2027年2月 金曜日 19:30~21:00
2026年
5月15日(金) 第1回:さみしさの歴史学-個人になること
現代のさみしさがどのように生まれてきたのかを社会的・歴史的に概観します。
文献:エリアス『文明化の過程』、テイラー『世俗の時代』、夏目漱石『こころ』
7月17日(金) 第2回:さみしさの発達論-一人になること
個人のさみしさがいかにして生じ、発達していくのかを概観します。
文献:エリクソン『アイデンティティとライフサイクル』、ウルフ『自分ひとりの部屋』、カポーティ『ミリアム』(『夜の樹』所収)
9月18日(金) 第3回:さみしさの病理学-一人になれないこと
さみしさの「孤立」の側面を見てみましょう。自殺や依存症、いじめや不倫から陰謀論、強制収容所まで、個人的なさみしさと社会的なさみしさのもたらす病いとはいかなるものかを明らかにします。
文献:メラニー・クライン『愛、罪、そして償い』、クリストフほか『絶望死』、ドストエフスキー『地下室の手記』
11月20日(金) 第4回:さみしさの治療論-他人と居ること
さみしさにいかに対処できるのか、さみしさから回復するとはどういうことなのか、さみしさの治療について考えます。
文献:東畑開人『カウンセリングとは何か』、村上春樹『ノルウェイの森』
2027年
2月19日(金) 第5回:さみしさの成熟論-自分になること
さみしさを引き受けることについて深く考えてみようと思います。
文献:ユング『無意識の心理学』、ウィニコット『情緒発達の精神分析理論』、エンデ『はてしない物語』
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